2026年8月1日から、特別養護老人ホーム(特養)などの介護保険施設やショートステイを利用している方の一部について、食費と居住費(部屋代)の自己負担が引き上げられます。
対象になるのは利用者全員ではありません。第3段階①の方は食費の負担限度額が30日利用で約900円、第3段階②の方は、対象となる居室を30日利用した場合、食費と居住費を合わせて最大約4,800円上がる計算です。ただし、実際の請求額は施設との契約や利用日数によって異なります。
この記事では、「うちの親は対象なの?」「いくら上がるの?」「何か手続きは必要?」という疑問に、Q&A形式でひとつずつお答えします。負担限度額認定証をお持ちのご家庭は、8月の更新手続きとあわせてご確認ください。
介護保険施設に入所したり、ショートステイを利用したりすると、介護サービス費とは別に、食費と居住費(部屋代)がかかります。この食費・居住費は原則として自己負担ですが、住民税非課税世帯などの所得の低い方には、負担を軽くする仕組みがあります。これが補足給付(特定入所者介護サービス費)です。
仕組みはシンプルです。標準的な費用の額(基準費用額)と、その方が実際に払う上限額(負担限度額)の差額を、介護保険が施設に支払ってくれます。この「上限額」が、2026年8月1日から見直されました。
2026年8月1日からの3つの変更点
根拠になっているのは、令和8年厚生労働省告示第88号と、厚生労働省が2026年5月29日に出した「介護保険最新情報Vol.1506」です。厚生労働省は、利用者やご家族への説明に使えるリーフレットもあわせて公表しています。
まず、今回の改定が関係するのは次のサービスです。
対象になるサービス
そのうえで、対象かどうかを見分ける一番の手がかりは、「介護保険負担限度額認定証」を持っているかどうかです。この認定証には利用者負担段階が書かれていて、今回引き上げの対象になるのは第3段階①・②の方だけです。
| 段階 | 主な対象者(2026年8月〜) | 今回の影響 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者:預貯金要件なし 市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者:単身1,000万円、夫婦2,000万円以下 |
据え置き |
| 第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入+合計所得が82.65万円以下 | 据え置き |
| 第3段階① | 同じく非課税世帯で、年金収入+合計所得が82.65万円超〜120万円以下 | 食費が上がる |
| 第3段階② | 同じく非課税世帯で、年金収入+合計所得が120万円超 | 食費と居住費が上がる |
| 第4段階 | 世帯に住民税の課税者がいる方など | もともと補足給付の対象外 |
生活保護受給者を除き、預貯金などの資産要件もあります。老齢福祉年金受給者に該当する第1段階は単身1,000万円以下、第2段階は650万円以下、第3段階①は550万円以下、第3段階②は500万円以下です。配偶者がいる場合の基準は、それぞれ2,000万円、1,650万円、1,550万円、1,500万円以下です。
⚠ ここが大切:まず認定証の「段階」を見てください
お手元の負担限度額認定証に「第3段階①」または「第3段階②」と書かれていれば、今回の引き上げの対象です。「第1段階」「第2段階」の食費・居住費の負担限度額は、今回の制度改定では据え置きです。ただし、施設独自の料金改定が行われる場合は、実際の請求額が変わる可能性があります。
まず食費です。金額はいずれも1日あたりの上限額で、実際の月額は利用した日数分になります。
| 食費(施設入所) | 7月まで | 8月から |
|---|---|---|
| 第1段階 | 300円 | 300円(据え置き) |
| 第2段階 | 390円 | 390円(据え置き) |
| 第3段階① | 650円 | 680円(+30円) |
| 第3段階② | 1,360円 | 1,420円(+60円) |
| 基準費用額(標準的な額) | 1,445円 | 1,545円(+100円) |
ショートステイの場合は金額が別に設定されていて、第3段階①は1,000円から1,030円へ、第3段階②は1,300円から1,360円へと、こちらも30〜60円の引き上げになります。第1段階(300円)と第2段階(600円)は据え置きです。
次に居住費です。上がるのは第3段階②の方だけで、第1段階から第3段階①までは据え置きです。
| 居住費(第3段階②の場合) | 7月まで | 8月から |
|---|---|---|
| 多床室(特養など) | 430円 | 530円 |
| 多床室(老健・介護医療院/室料を徴収する場合) | 430円 | 530円 |
| 多床室(老健・介護医療院など/室料を徴収しない場合) | 430円 | 430円(据え置き) |
| 従来型個室(特養など) | 880円 | 980円 |
| 従来型個室(老健・介護医療院など) | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室的多床室 | 1,370円 | 1,470円 |
| ユニット型個室 | 1,370円 | 1,470円 |
※表中の「室料を徴収する場合」の多床室とは、「その他型」または「療養型」の介護老人保健施設、あるいは「Ⅱ型」の介護医療院の多床室で、療養室の床面積が1人あたり8平方メートル以上のものが対象です。ご自身の部屋がどれに当たるかは、施設にご確認ください。
30日分で計算すると、次のようなイメージになります。
月額の増え方(30日で計算した目安)
実際の請求額は、居室のタイプ、施設の種類、その月の入所日数、そして施設との契約内容によって変わります。正確な金額は、施設の請求担当や相談員に確認するのが確実です。
制度改定そのものについて、利用者やご家族が特別な変更手続きを行う必要はありません。2026年8月利用分から新しい負担限度額が適用されます。ただし、実際の請求額が上がるか、またいくら上がるかは、施設との契約内容や現在の設定額によって異なります。施設から届く案内や料金表をご確認ください。
ただし、負担限度額認定証の更新手続きは別です。この認定証の有効期間は8月1日から翌年7月31日までの1年間で、毎年更新の申請が必要です。自動では更新されません。
更新の案内は、多くの市区町村で6月から7月ごろに郵送で届きます。発送時期や提出期限は自治体によって異なるため、届いた案内の記載をご確認ください。まだ提出していない方は、できるだけ早く手続きを進めてください。
⚠ ここが大切:更新が遅れると8月分が全額自己負担になることがあります
認定は原則として「申請した月の1日から」の適用で、前の月にさかのぼりません。つまり9月に申請すると、8月分の食費・居住費は軽減が受けられず、全額の負担になるおそれがあります。8月からの認定を受けたい方は、8月中に申請を済ませてください(期限や取り扱いは市区町村によって異なるため、必ずお住まいの窓口でご確認ください)。
はい、その可能性があります。今回、段階を分ける所得の基準額が、年80.9万円から82.65万円へ引き上げられました。これは令和7年度の年金額の改定を踏まえた見直しです。
境目の金額が上がるため、収入が同じでもこれまで第3段階①だった方が第2段階に移る可能性があります。8月からの食費の上限は第2段階が1日390円、第3段階①が1日680円ですから、段階が変われば1日290円、30日でおよそ8,700円の差になります。ただし段階の判定には預貯金などの要件も含まれるため、最終的な判定は市区町村が行います。
親の年金収入が80万円台前半という方は、更新後に届く認定証の段階が変わっていないか、ぜひ確認してみてください。
有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームは、補足給付そのものの対象施設ではありません。これらの施設の食費や部屋代は、施設と入居者の契約で決まる仕組みなので、今回の改定が直接そのまま反映されるわけではありません。
ただし、こうした住まいで暮らしながらショートステイを利用している場合は、そのショートステイの食費・居住費が今回の改定の対象になります。また、施設側が物価上昇を理由に費用を見直すことは別途ありえます。値上げの案内が届いたときは、それが今回の制度改定によるものなのか、施設独自の見直しなのかを確認すると、話が整理しやすくなります。
相談できる先と、確認しておきたい制度
この記事のまとめ
「請求が上がった理由が分からない」という不安は、仕組みが分かるとかなり小さくなります。まずは認定証の段階を確認して、更新の手続きが済んでいるかどうかだけでも見てみてください。
※掲載情報は執筆時点のものです。制度・数値は改定される場合がありますので、最新情報は各機関の公式サイトをご確認ください。
※本記事は2026年7月時点の情報をもとに、厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506」(令和8年5月29日)および令和8年厚生労働省告示第88号を確認して作成しています。制度は今後変わる可能性があります。金額は1日あたりの上限額で、実際の負担額は利用者負担段階・居室区分・施設の種類・利用日数・施設との契約内容によって異なります。具体的な手続きやご家庭の状況については、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口、担当のケアマネジャー、施設の相談員にご確認ください。