一人暮らしの親が心配で、思いきって自分の家に呼び寄せた——。「これで毎日そばで見守れる」とほっとしたのも束の間、介護保険サービスの自己負担や毎月の出費を見て、こう感じる方は少なくありません。
「同居を始めたら、なんだか介護のお金の負担が思ったより重いな…」。実はこれ、気のせいではないことがあります。親と同じ世帯になったことで、それまで受けられていた"低所得世帯向けの軽減"が受けにくくなるケースがあるのです。
そこで知っておきたいのが「世帯分離」という選択肢です。この記事では、同居で介護のお金がどう変わるのか、世帯分離で軽くなる場合・かえって損になる場合の両方を、はじめての方にもわかるように整理します。
介護保険には、所得の低い方の負担を抑えるしくみがいくつもあります。ところが、その多くは「本人の所得」だけでなく同じ世帯にいる家族の所得や課税状況もあわせて判定されます。
たとえば、親が一人暮らしのときは住民税のかからない「非課税世帯」だったのに、働いている子どもと同居して同じ世帯になったことで、世帯全体では「課税世帯」とみなされる——。すると、次のようなお金が変わることがあります。
世帯の状況で変わりうるお金
「良かれと思って同居したのに、かえって負担が増えた気がする」。その背景には、こうした世帯単位の判定があるのです。
世帯を分けることで、親だけの世帯の所得で各種の判定がされるようになり、親が「非課税世帯」に該当すれば、前の章で挙げたお金が軽くなる可能性があります。
世帯分離は「必ず安くなる裏技」ではありません。次のような負担増やデメリットが、軽減額を上回ってしまうこともあります。
世帯分離のデメリット・注意点
⚠ 大切な前提
世帯分離は、実際に生計が別であることが前提の手続きです。「介護費用を下げること」だけを目的とした申請は本来の趣旨と異なり、窓口で理由をたずねられることもあります。とくに夫婦の間は互いに扶養する義務があるため、原則として世帯分離は認められません。
よくある勘違いが、「世帯分離すると、親を扶養に入れて受けている税金の控除がなくなるのでは?」というものです。実は、住民票上の世帯分離と、所得税・住民税の扶養控除は別の判断です。
税の扶養控除は「生計を一にしているか」で判断されるため、同居して家計を支え合っていれば、世帯を分けても扶養控除を続けられる場合があります。一方で、勤務先の家族手当や健康保険の被扶養者の扱いは、それぞれ別のルールで判断されます。混同しやすいので、自分のケースがどうなるかは個別に確認しておくと安心です。
いちばん確実なのは、お住まいの市区町村の窓口で、世帯分離した場合としない場合の負担を試算してもらうことです。介護保険料や高額介護サービス費は介護保険の担当課、国民健康保険料は国保の担当課が窓口になります。介護全般の悩みは、地域包括支援センターでも相談できます。
⚠ まずやること
「同居してからお金の負担が気になる」と感じたら、まずは市区町村の介護保険担当窓口か地域包括支援センターへ。世帯分離が向いているかどうかも含めて、あなたの世帯にとっての損得を一緒に整理してもらえます。
この記事のまとめ
※掲載情報は執筆時点のものです。制度・区分・上限額は改定や自治体によって異なる場合がありますので、最新情報や具体的な判定は各機関の公式サイト・窓口でご確認ください。税の扶養控除の「生計を一にする」の考え方は国税庁の基準にもとづきます。
※本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。介護保険料の段階、高額介護サービス費の上限額、各種軽減の要件は、制度改正や自治体によって異なり、今後変わる可能性があります。ご自身の世帯での損得や手続きの可否については、お住まいの市区町村の介護保険・国民健康保険の担当窓口、地域包括支援センター、税務署などにご確認ください。